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【大阪一人旅】痛く愛しい余韻【part 6】

エッセイ/日記(日常譚)

駅までの途中、GRACE MAN CAFEさんの呼び込みに惹ひかれ、限定のミックスシェイク、抹茶バナナを頂いた。
甘いものは控えているが、抹茶とバナナなら健康的なため、甘味には入らないといえよう。

抹茶が効いておりシェイクを口に入れた瞬間、抹茶の風味としっかりした苦みが感じられる。
柔らかいのど越しの後をバナナの風味と甘みが追いかけてくるので、一口で味わいの波が楽しめた。

Sさんはマスカットシェイクでこちらも美味しそうだった。

場所を寺田町へ移してEさんと合流。

三人でクレープえんどう寺田町本店さんへ。

ついに……。
ついに、待ちに待った甘いもの解禁である。
こちらには絶対に何があっても来ると決めていたため、散々の誘惑を断ち切ってきた甲斐もあるというものだ。

寺田町駅を降りてすぐ、運のいいことに列は前に二名程でほとんど待つことなく順番が来た。
先まず感動したのは、店員さんの案内がすごく丁寧で親切だったことである。
僕は有名店たる理由が、こういうところに出ると思う。

絶っっ対にずんだ生クリームを頼むと、僕は決めていた。

しかし正直に書くと、相当に悩んだ。
食べたいクレープを全部食べるかどうかである。

ビターカラメルとナッツ生
アイス入りクリームブリュレ
クーベルチュールチョコバナナ生
カスタードと生
自家製ベリーソースとクリームチーズバター

端から端まで食べたいのは山々であるが、そこは節度ある大人である。

僕は断腸の思いで、名物ずんだ生クリームに生クリーム1スクープトッピングで頼んだ。

生クリームを頂く。
評判通り、甘さは確かに控えめである。
一口目のインパクトではなく、クレープひとつの単位でおいしさを完結させる考えられた甘さ。

そして、甘さ控えめの生クリームの余韻が続く。

生クリームなので油分で後を引くのは当然なのだが、生クリームとグラニュー糖だけ……?
しかし、僕は舌が敏感なほうではないので、何が入っているかはわからないのだ。

気になったので調べてみた。

当店のクレープは、たくさんのこだわりが詰まっています。生地には、地元宮城県産の美味しい卵を使用。一晩寝かせてもちもち食感に。クリームは、2種類のクリームをブレンド、甘さ控えめの自家製クリームです。

こだわり抜いた、オリジナルクレープ生地と自家製クリーム。クリームクレープでは、生地とクリームそのものも美味しさをお楽しみいただけます。

公式インスタグラムより

こだわりがつまってた~。
僕が味わっていたのはどうやら、こだわりという余韻だったらしい。

次はずんだを一口。

粗めで粒々な食感と、味は枝豆感がしっかり残ってるのに、一切嫌な豆臭さがない。
そして香るように効いてくる塩味が絶妙。

生クリームとずんだを一緒に一口。
約束された美味しさ。真珠の耳飾りの少女にも食べて欲しいわ。

生地と共にガブリ。
モチモチの食感が加わって、粒モチふわっ。食感だけで、もう幸せ。
そして生地にも塩味が効いてる。
生地とずんだの塩味のお陰で、控えめな甘さの輪郭がハッキリして際立つ。
甘さを抑えながら、塩味でこれだけ甘さを引き立てられるクレープに会ったのは初めてである。
もしかするとクレープだけでは留まらないかもしれない。

地味だけどスプーンも嬉しい。
食べ進める中で発生してしまう無理を余儀なくされる一口を回避し、終始好きなように味わえるからである。

これはもう約束されすぎて、逆に約束を破ってる。
美味しすぎる。レシピへの研鑽けんさんと体験としての完成度と配慮。
考えてきた量や向き合ってきた時間を感じる。
無限に食べられる。無限に食べたい。

また来なければならないのである。

二人の案内で、四天王寺へ移動。
再建、再興を経ているけれど、創建そうけん当時(飛鳥あすか時代)の様式ようしきを肌で感じられたのは貴重だった。
一つずつが大きいというのもあるのかもしれないが、無駄はないけど余白がある。

誰でも入れる場所が、味わいと共にことごとく美しい。
丁寧に扱ってきた物や場所が、思いやりと努力によって残るとこうなるのかと思った。

和わを以もって貴とうとしと為なすとは、こういうことなのかもしれない。

総本家 釣鐘屋そうほんけ つりがねやさんへ移動。
Eさんおすすめの釣鐘饅頭が目当てである。

リーズナブルで素朴なサイズ感が堪らない。

久しぶりにこしあんを頂いた。
しっとりとしたカステラのなかに”こしあん”がぎっしり詰まっている。

カステラだからバッツリ甘いと思ったが、しっかり”こしあん”メインでエグみのない上品な味わいが美味しい。

この旅でお土産物を買う予定はなかったが、つい買ってしまった。

​あべのたこやき やまちゃん 本店さんへ
EさんオススメのヤングBを頂く。

丁度焼き上がりを待つ順番で、焼き立てアッツアツを食べることができた。

いくら僕が愚おろかだとしても、焼き立てが熱いことは想像がつく。
しかし、我慢しきれず放り込んだ一個目、噛んで玉を割った瞬間に口の中でマグマが広がったのである。

僕はすぐに危機を察知し、口を開け上を向きハフハフした。

それはもうハフハフした。
この瞬間においては、世界一のハフハフ加減だったと自負している。

僕は初めて”はぐれメタル”を倒したときみたいに、ハフハフレベルが上がった。
マグマと旨さに身を焼きつつも、ハフハフしきった僕は勝利した。

二個目、ここで”割っておく”ということはしない。
たこ焼きはあっつあつを玉で味わう浪漫ロマンが欲しい、なにより男には背を向けられないときがあるのだ。(ここじゃない)

二個目も相当にレベルがあがった。
しかし、ふと疑問が頭をよぎった。
ハフハフすること、すなわちレベル上げすることが目的になってしまい、冒険を楽しめていないのではないか、という疑問である。

ここで僕は、少し冷ます選択を取った。かろうじて割りはしなかった。
そう。背は向けないが浪漫は捨てることにしたのだ。
なんとも女々しい選択である。

結局やまちゃんのたこ焼きは、最後の八個目まで中はマグマだった。
Eさんは食べ慣れており、早々に割って冷ましながら美味しそうに味わっていた。
引くに引けなくなった僕は、最後まで変わらずに溢あふれ出てくる出汁マグマと美味しくも切ない敗北を味わったのであった。

予約の時間まですこし時間があったので、三人で近くのゲームセンターへ。

あまりゲームセンターで遊んだことのない僕は、ゲームセンターという空間がもう楽しい。
僕はカツアゲされたことがないが(シカにならされたが)、古き良きゲームセンターは、ちょっと怖さがあった。
今のゲームセンターはとっても綺麗でUFOキャッチャーも沢山たくさんだった。

僕はUFOキャッチャーの才能は驚くほどないが、Eさんが百円で二個のチャームを取ったのである。
そのチャームはキーボードのボタンタイプで、いいねとリツイートの絵柄だ。

そして颯爽さっそうと僕にいいねを、Sさんにリツイートをプレゼントしてくれたのだ。

僕はすぐに鞄に付けた。
Sさんも大層気に入ったようで、ヨーヨーみたいに端を指に括くくりりつけて、一生カチカチと音を響かせていた。

どれくらい鳴らしていたかと言うと、僕が何度となく興味につられふらふらとしても、カチカチと音がする方にいけば合流できるくらいには一生鳴らしていた。

もしかするとまだ鳴らしているかもしれない。

そして良き時間となりチャボさんへ移動。

焼き鳥大好きな僕のために、Sさんが予約してくれたお店である。

オススメ通り全てが美味しいお店であった。
焼き鳥や鶏肉料理はさることながら、大根を美味しく炊いたやつの天ぷら(正式名称)が美味しくて、パクパク食べてしまった。

Sさんは相当に気に入ったらしく、たしか追加で二度も注文した。
抗えない美味しさなので仕方がないのである。

終電の時間になり、二人と別れた一人の帰り道。
明日で最後かと思うと、何となく宿に戻りたくなくて、昨日観光したばかりの街をひとり歩いた。

昨日はこの街が、煌きらめいて見えた。
僕がこの旅のこれからを思うほど、未知への期待が輝いていたんだと思う。
商人の活気に中あてられて、観光客が賑わって、その一人である僕も同じ分だけ高揚こうようしていた。
でも今日はほとんどの店にシャッターが下りて、芳ばしい匂いのひとつもしない。
今日がやっと終わったみたいな、抜け殻になった街の疲労感が寂しい。

大阪に初めて訪れて、自分とは関係の無い所から、自分と関わりのある友人の居る場所に変わった。
途端に親しみとか愛着とか、そういうものが沸いてしまう。
これは嬉しい事だけれど、この感情を持ってしまった分だけ別れの余韻が辛くなる。

僕はこの旅の目的をまだ果たせていない。
路地を曲がると、いよいよ灯りも細くなる。
先行く人が一瞬振り返って、真珠の耳飾りの少女の眼差しが浮かんだ。

僕はこの思考の渦に飲み込まれたくなくて、漂ただようう寂寥感せきりょうかんに無理やり蓋ふたをした。
そして明日も目一杯楽しもうと心に刻んで、宿に戻るのであった。

エッセイ/日記(日常譚)
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