僕の棘が抜けて数日、七夕を目前に控えた攻略日。
10分前、珍しくだれも集まらない。
日程間違えたかな?念のためスケジュールを確認しにいく。
大丈夫そうだ。
PC周りの動作とFFの設定も確認しておくことにした。
PCの更新が入っていたのと、初日ゼレニアの騎士道に反するともとれるギミックのおかげで、僕は学びを得ることができた。同じ轍は踏まない。
そうこうしているとカイゲさんとみどさんが集まっていた。
「こんばんは~」
挨拶をしていると人が集まってきた。
何気なしにTRPGの話をしているとチャットの通知音が鳴る。みずきさんからだ。
マジで変な理由すぎて申し訳ないんですが、唐揚げ揚げてるのでちょっと遅れます!

まさかリアルの画像載せるなんて思ってなかったよ!!!美味しそうだな!!!
うづきさん「唐揚げは食べなくていいんですか?!」
しのださん「うおおちょっとトイレ行ってきます」
みずきさん「今これで 作り置きなので食べないんですけど、揚がってて」
僕「eeee」
カイゲさん「揚げたてなのに……!?」
みどさん「ついに料理して遅刻する回発生してウケてる」
みずきさん「すみません!変な遅刻理由としてさらしてもOKです」
僕「揚げたて食えないの拷問じゃん」
みずきさん「揚げたては軽くつまんだ感じうまかったんで大丈夫です〇」
じゃあ大丈夫か。

バブさんもかよ!!!早いな仕事が!!!ってか一瞬トイレに爆走する人いなかったか!?

みどさん「肉と言えば さわ〇か いってきたんスよ~」
自由!!!ってかツッコミがいないこの固定!!!私もボケなんだよ!!!
手強い…。これが僕に与えられた試練…。
ボケのバーストに何もツッコミできない。シナジーすら発揮できる気がしない…。
一応書いておくと本ページは極ゼレニアブラインド攻略の記事です。
みずきさん「お待たせしました~」
僕「そういえばソフィアも来てないっすね。ちょっと連絡とってみます。」
うづきさん「お願いします~みんなまったりしてるんで生きてさえいればいいと伝えてください~」
僕「はい~」
僕「今日固定やで」メッセージ送信からの無限呼出。(いつものことです。)
ソフィア「ごめん!!!いま、インする!泣」返事
僕「ギルティだって」メッセージ送信
ソフィア「まじですません~次やったら全員にさ〇やかご馳走するので許してください!」
「こんばんは~大丈夫ですよ~」
「送迎もしてください~」
「送迎有なら4-4で別れて別の店舗にいきましょう!」
「www」
誰か さわ〇か で4-4散開しようとしてる人がいたけど気のせいだな。
僕は朝が早いので遅くまでプレイできない。
そのせいで大体23時か遅くても23時半には攻略を終了にしてもらっている。
今日はこの感じだと1本やってせいぜいだろう。
かつての僕なら、少し開始が遅れるとか、連絡がつかないくらいでもメンタルを揺すぶられていた。
こんなやりとりを楽しめるのは久しぶりな気がした。
からあげ事件もソフィアの遅刻もきっとゼレニアの策略だろう。
いよいよ手段を選ばなくなってきたところを見ると、六式が山場なのかもしれない。
うづきさん「では誘っていきます~準備できたらいきましょう~」
レディチェックが入りコンテンツへ突入する。
フィールドマーカーが置かれ、レディチェックが入り、食事を摂る。
チェックを入れると間もなくカウントが始まった。
高い状態で集中できているのに、同時にリラックスもしているような暖かい高揚感。
カウントダウンしていく数字と、この無垢な高揚感をただ感じていた。
カウントが0になると同時にそれぞれ飛び掛かり、魔法を放つ。
ついに試練が始まった。
紹介フェーズ。これは何も問題ない。線取りの動きもスムーズになり洗練された。
聖護壁。前回から取り組み始めたバーストを本体へ向けるのも良い感じだ。
魔法陣展開これは得意。これだけなら誰よりもはやく動き出せるから率先して動く。
二式。これは苦手。ギミックがどういうものかは解説してもらったけど僕には見分けがつかない。だから仲間を頼る。信じてついていく。もしミスになったとしても責めない。僕ひとりではここで攻略が詰む。だから率先して動いてもらってるだけでありがたい。
三式。これも大丈夫。最初はわからなかったけど解説してもらったお陰で、得意なギミックになった。
幻影生成からのクライムクロス1回目。複合ギミック。ザンデ式で処理。
四式。ギミックを解くのに一番時間が掛かった。だからこそ皆が理解を深め安定してこなせるようになった。
幻影生成からのクライムクロス2回目。複合ギミックだけど処理はシンプル。でも慣れてきてもミスしやすいタイプだ。ここは丁寧にこなす。
五式。外周からの時間差直線範囲と二式の複合ギミックというのはわかる。でも二式が苦手だから自動的に苦手ギミック。そして僕にはやっぱり避けられない。バリアと軽減で全員が一発喰らうのを許容して、最短の斜め移動でギミックをこなす方針。固定の強み。
問題の六式。三式と扇範囲の複合ギミック。言葉で表すとたったこれだけ、でもこれが難しい。
ギミックと処理の順番が整理できたばかりで、それぞれがまだ動ききれない…。何よりもまだ試行回数が少ないからこれは仕方がない。犠牲を出しながらもなんとか突破。
魔法陣展開。繰り返しっぽいか?複合ギミックでないのは確認済み。
ローズ・カタルシス、全体。生きてる。時間切れはまだこない。
スペクトルブレイク、線取り。
これやっぱり六式が山場だ!
ストックブレイク、多段頭割り、連続か…!
被ダメ上昇デバフつけてると、ここで崩れるか大きくDPSが下がるってわけか。
「たとえ我が身を賭してでも……!」
ゼレニアは強いなあ。忠義こそすべてなんだ。
僕はやっぱり、貴女のようにはなれなかった。
「おのれの浅はかさを悔いるのです……!」
そうだね。
自分の行いには悔いばかり残ってる。でも、泣いてばかりもいられない。
僕のこの気持ちが、思いが、正しいかどうかなんて判断できないけど…
みどさん「ぎゅーまさん!LB打っちゃって下さい!」
LB3発動!大地喰らう蛇!!!

それでも…!

今はただ、僕なりの答えを、見つけていきたいと思えているよ…!
魔法陣展開・零式、ローズ・オブ・フィナーレ
きっとこれで時間切れだ。ゼレニアを追い詰めてる!
いけるか…!?

残り2.1%…。
届かなかった…!でも、絶対届かない距離じゃない!
四式で離れたときにスキル回しが少し途切れた。六式ではまだスキル回しがおざなりになっている。
2.1%で改善の余地も見えてる。いけるぞ!
二回目。
大きなミスなく進行するもやはり六式で崩壊。
時間的に次が最後か…?
今までの経験からすると、初回が順調でパターンのブレから中盤に進行が滞ることもある。
強く、大きい試練だ。
僕に、僕たちに…乗り越えられるのだろうか…?
バブさん「あああああ、マイクミュートになっていましたあ!」
やってくれたなゼレニア!!!(数か月ぶり2回目)
唐揚げのギミック解説のスライド揚がった時しゃべらないなとは思ったよ!
でも花粉でミュート多めの時もあったからそんな日なのかなとか思ってたよ!
こんなところにも複合ギミックを用意してるなんて…。やるな…開発陣…!
「www」
「なんか静かだなって思ってましたw」
「やられましたねw」
お陰で、空気は最高潮になった。
三回目。
今回も大きなミスなく進行。
スキル回しも問題ない。
ヴァイパーは腕が無限に伸びるから、改善が早い。四式も殴り続けられてる。
そして問題の六式。範囲一回目を避けてから、三式処理。
まずい。
三式に気を取られすぎて範囲二回目を把握しきれてない。
やっちまった…!
DPSを出そうとスキル回しにも意識がいってた。当然のダウンだ。

塔も爆発したっぽい…。
うづきさん、しのださんのタンク二人、白のみずきさんを残してここでPTが崩壊。
届かないか…。
棘が抜けてから攻略日までの数日、僕は何もしてこなかった。
それは諦めとか、後ろ向きな事じゃない。
今のままで良いと思えたからだ。
もう十分やることはやってきた。
装備も揃えた、薬も食事も作った、ヴァイパーも時間の許す限り触ってきた。
これでもし今日で踏破できなくても、僕たちなら前を向いていられる気がした。
強いて言えば、自分を許し、自分を受け入れ、仲間を信じたのかもしれない。
「ヒーラーLB3使います!」


「バフ炊いちゃいます!」

「おおおお」
「ナイス!」
「ナイスです!」
「ないすうううう」
PT崩壊から一気に立て直す。バフの機転も利いた。
LBゲージは消費したけど、さっきより削りは早い。
諦めるには、まだちょっとはやいよなあ!
一転攻勢、しかし同時に皆が冷静にギミック処理に思考を戻しこなしていく。
実際六式は完璧じゃないし、苦手なギミックはそのままだ。
でもそれでもいいんだ。僕にできないことは仲間を頼っていいんだ。
そして皆が声を掛け合う。
5%
「まだいけるんで、落ち着いていきましょう。」
「薬割ってない人使ってくださいね~」
4%
「リプ使います!」
「はい~」
「軽減ありますよ~」
連続ストックブレイクは耐えられそうだ。
いけるか?
3%
もうバフの管理もリキャストの管理もしなくていい。
積み重ねのお陰で威力の高い技を迷いなく繰り出していける。
2%
やることはやった!あとはデュナミス!
1%
いけえええええ。

「おおおおおお」「やった~」「キター」「お~」
他の多くのプレイヤーから見たら、最新のレイドに比べたら、極コンテンツなんて難易度は低いかもしれない。
それでも僕にとっては、強大な試練だった。
皆が歓喜に沸く。
「このような 醜態を…… 申し訳ありません スフェーン様……」
狂ってしまった五月の薔薇。
忠義に厚く献身的で、気高いその心が、こうも儚くて良いのだろうか。
僕は未だ実感のない喜びを待ちながら、作り変えられ再現されても、最後まで人の為に生きることのできるゼレニアの心を想い、自分に問いかけた。
僕のありたかった姿。
そうはいられなかった現実。
良い人だった僕は散ってしまって、受け入れられなかった。否定したかった。
でも、これでいいんだ。
儚いからこそ美しいのかもしれない。
貴女という試練を乗り越えて、僕の苦しい過去さえ、いつかは美しく見えるのかもしれないと思えた。
僕たちはついに極ゼレニア討滅戦を踏破した。
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