極7.2ブラインド攻略 9 ~その扉の向こうに~

フィクション

極ゼレニア討滅戦を踏破後。

制限時間がそれなりに迫っていたので、コンテンツ内での記念撮影を程々に武器を確定。
人通りの少なそうな場所で記念撮影をすることになったので鯖移動や場所決めを行う。

そんなことをしていると、あの暑い夏からやっと前に進めるという安堵感を穏やかに感じた。
いつか感じた熱く焼かれた石を抱えているような感覚はもうない。
そしてそんなことを自覚し始めると、少しづつ胸が高鳴り始めてブラインド攻略をやりきった達成感が、腹の底から静かに湧いてきた。

撮影場所はソリューション・ナインの大階段。

私が決めたわけではないから本当に不思議で、なんともFF14らしいというか、粋だなと思う。

目の前の試練は乗り越えられた。それでもまだ道半ば、これからも試練は続く。
クリアを祝いながらも現実を忘れさせず、誠実に応援し、背を押してもらっているように思えた。

終わりのない狭く急な螺旋階段では、もうないんだ。

翌朝、僕はFCの庭にいた。

FCの何ら変わりないいつもの庭と、リテイナー。
いつもと違うのは僕の方だ。

僕は、FCを去る決心をした。

罪と罰ではない。
このままでいいのか、いけないのか。それが問題だ。
弱い自分を受け入れたうえで、向き合いながら生きていくために、必要だと思った。
これから歩いていくために、少し立ち止まり、自分を理解するための時間が必要だと思う。

登りなれた門扉を潜って、振り返る。

いくつかの出会いと別れがあった。
久しく会っていないメンバーは元気だろうか。連絡先も顔もわからない、ゲーム内の繋がりだけだ。
それでも、元気だといいな。

今まで当たり前にありすぎて、わからなかった。僕がつらいときに、心の拠り所になってくれた場所。

「一方通行なわけじゃなし、いつでも戻ってきてもいいのよ~」

FCマスターでフレンドの彼女はそう言ってくれた。
僕がFCでイベントをやりたいと言えば協力してくれて、何かあれば話を聞いてくれる。

彼女はいつだって、みんなのいつか帰るところを作ってくれていた。

それがどんなことなのか、僕にはまだわからない。
あたりまえにありすぎて、見えてない。

いつか僕が自分を見失って、居場所を失くし帰ったら、彼女はどうするのだろうか。
まさか拳を振り上げて殴った後に、ニカっと笑いはしないと思う。

不安がないわけじゃない。

また棘が刺さってしまうかもしれない。終わりのない螺旋階段を転がり落ちるかもしれない。

「もしそうでも、また立ち上がるだけ。だよね。」

門扉の前で視線だけ向けたぎゅーまと目が合い、今度は僕がそう呟いた。

わかってんじゃん。

とでも言いそうにニカっと笑った思ったら、彼は姿勢と表情を正して丁寧にお辞儀をした。

絶対なんて言えない。

それでも、超える力を胸に。

僕自身の心とともに、僕自身と向き合いながら、生きていきたいと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました